学生「受け子」に顔写真を要求 詐欺組織、弱み握る

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学生「受け子」に顔写真を要求 詐欺組織、弱み握る

特殊詐欺グループの末端構成員として、被害者に直接接触してキャッシュカードをだまし取る「受け子」に、学生からの応募が目立っている。動機は小遣い稼ぎの軽い気持ちでも、犯罪組織に個人情報を握られて離脱できなくなり、ずるずると加担させられるケースも。春休みを迎え、新たな学生らが入学する新学期を前に、警察当局は警戒を強めている。

スマホに100人以上 《受け子募集 高額バイト》

短文投稿サイト「ツイッター」に投稿される「闇バイト」の勧誘。「未成年の多くは小遣い欲しさからバイト感覚で応募する」と、京都府警の担当者は説明する。安易な応募の先には、後々悔やまれる深い落とし穴が待っている。

昨年11月、府警八幡署が特殊詐欺事件で逮捕した男(30)のスマートフォンには、運転免許証や学生証など身分証明書を手にした100人以上の顔写真が見つかった。

男は受け子をツイッターで募集しており、反応があると写真の送信を要求。スマホの顔写真は、各応募者が身分証をカメラに向けながら「自撮り」したもので、学生だけでなく、あどけない表情の中学・高校生の姿も保存されていた。

男は府警の捜査に対し、「応募者に直前に逃げられたり、金を持ち逃げされたりしないよう個人情報を送らせて管理していた」と供述。受け子に応募しただけで個人情報を丸裸にされ、弱みを握られて犯罪組織に絡めとられる実態が明らかになった。

府警によると、一般に受け子が得られる報酬は、詐取した金額の約5%に過ぎない。とはいえ昨年府内で起きた特殊詐欺事件の平均被害額が約189万円だったことから、1回につきおよそ10万円と、まとまった額を得ていた計算になる。

ずるずると深みに

府警の担当者は「一瞬で大金を得られることから犯行を繰り返し、逮捕時に複数の余罪が見つかることも珍しくない」と指摘。安易な動機からずるずると深みにはまっていく構図が浮かぶ。令和3年版犯罪白書によると、受け子や、詐取したカードを使って現金を引き出す「出し子」の約55%に1年以上の実刑判決が出ていることも、こうした関係性を裏付ける。

会員制交流サイト(SNS)の普及により犯罪に手を染めやすくなる中、逮捕後に「捕まってよかった」と供述する受け子らも多いという。府警はツイッターでのパトロールを強化し、受け子へ応募する投稿を発見次第、警告文を送る方針。担当者は「もうけ話にはわながある。誘惑に乗らないでほしいし、警察も犯罪者を生み出す応募を食い止めていく」と話している。

摘発の7割 10~20代

SNSを通じて、特殊詐欺グループの末端に加わる若者たち。実行役として摘発される可能性も高く、「捨て駒」として組織に都合良く使われている実態が浮き彫りになっている。

昨年法務省が発表した犯罪白書によると、令和2年の特殊詐欺事件の摘発件数は約7400件。そのうち20歳未満が約2割、20~29歳が約5割と、若者の摘発が大半を占めている。

特殊詐欺グループは、犯行の指示役▽被害者に電話をかける「架け子」▽偽の身分証などを用意する「犯行準備役」▽受け子▽出し子-から構成される。このうち受け子と出し子がグループ全体の人員の半数を占めており、30歳未満が約6割だった。

摘発された受け子と出し子の約8割が動機として「金欲しさ」を挙げているが、受け子と出し子の半数は、約束した報酬を渡されていないことも明らかになっている。

産経新聞

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