【スクープ】違法キャバクラ、有罪組長に追徴2・8億円 福岡地裁、赤字認めず売上金全額

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【スクープ】違法キャバクラ、有罪組長に追徴2・8億円 福岡地裁、赤字認めず売上金全額

無許可でキャバクラ店を経営したとして風営法違反と組織犯罪処罰法違反(犯罪収益仮装)の罪に問われた指定暴力団道仁会系組長の男(42)=福岡市博多区=に対し、福岡地裁は9日、懲役1年6月、執行猶予3年、罰金100万円、没収約390万円、追徴金約2億8638万円の判決を言い渡した。「店の経営は赤字。追徴すべきではない」との組長側の主張に対し、地裁は売上金が暴力団の資金源となった点を重視。最大限の追徴が必要だと判断した。  

組織犯罪処罰法は犯罪収益を没収できない場合、同価値の財産を追徴できると規定。追徴額は裁判所に裁量があり、事件の性質に応じて決定している。  

過去にはキャバクラ店の無許可営業で約8億円を売り上げた被告への追徴金が約4千万円にとどまった判決もある。  

今回の事件では売上金約2億9千万円に対し、押収できた没収分(約390万円)を除く全額を追徴した。甲南大の渡辺修特別客員教授(刑事訴訟法)は「被告が暴力団組長であることを重視した厳しい判断。暴力団犯罪を抑止する必要性も考慮されたのだろう」と指摘する。  

判決によると、組長は2018年3月~21年2月、福岡市・中洲でキャバクラを無許可営業し、売り上げの一部を知人の口座に振り込ませて犯罪収益を隠匿。判決は検察側の求刑に対して執行猶予を付けただけで、金額については主張通りとした。  

弁護側は公判で、売上金は酒の購入や従業員の給料など経費に充てられ、経営は赤字だったとして「利益がなかったのに追徴するのはおかしい」と訴えていた。  

神原浩裁判官は判決理由で「店の利益は、少なくとも間接的には暴力団の資金源になっていたと認められる。被告(組長)が店を経営することを是認する余地はなく、経費分も含めて追徴する必要性は高い」と述べた。弁護側は控訴する方針。  

福岡地検は昨年3月、組長名義の組事務所(4階建て)の仮差し押さえを請求し、地裁が認めている。判決が確定して追徴金が支払えない場合、事務所は国の所有になる。福岡県警によると、店には「暴力団員立入禁止」の標章が掲示されていた。

西日本新聞(小川勝也)

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