“ヤメ暴”の社会復帰支援1年 7人就労の成果と課題 愛知県警

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“ヤメ暴”の社会復帰支援1年 7人就労の成果と課題 愛知県警

愛知県警が“ヤメ暴”の社会復帰を後押しするため、就労支援に力を入れている。この1年余りで暴力団を抜けた元組員7人が県警の紹介で仕事に就いた。社会に受け皿を作り、組織の弱体化を進めるのが狙いだが、受け入れ企業はまだ限られているのが現状だ。

「雇ってもらえてうれしかった。体が動く限り一生懸命頑張りたい」。2021年7月、人材派遣会社に就職した元組長の70代男性は取材にこう話した。  

公務員だった20代の時、ある事件を起こして警察に逮捕された。「天国から地獄に落ちた。その時に助けてくれたのがこっち(暴力団)の人だった」と振り返る。以来、40年以上にわたり裏社会で生きてきた。  

転機は昨年2月。がんを患う妻を看病するため、組織を離れた。病院代の支払いもあり、つてを頼って職を探したが、元暴力団という経歴がネックとなり、思うようにいかなかった。そんな時、県警から今の勤め先を紹介されたという。  

仕事は週3回程度、工場で空調のダクトや機械のモーターを取り外し、内部の掃除などをしている。体は油にまみれ、すすで真っ黒になることもあるが、「仕事は楽しい。やれる限り続けたい」と意欲を語る。  

県警によると、特定抗争指定暴力団山口組の中核組織「弘道会」がある県内の暴力団構成員と準構成員は21年末時点で計約1000人。暴力団排除の機運の高まりで全国的に減少傾向にあり、愛知も09年と比べ4分の1に減少した。ただ、脱退しても仕事に就けず再び組織に戻る元組員がいるのが課題だった。  

県警は21年4月、暴力団対策室に「社会復帰対策係」を新設。元組員を雇用した企業への給付金を年間最大72万円に引き上げ、元組員が損害を与えた場合は最大200万円を補償することにした。就労後も、定期的に元組員と受け入れ企業の双方と連絡を取り、問題がないか確認している。  

成果は少しずつ表れ、今年4月末までに20~70代の7人が土木建築会社や運送会社などに就職した。うち1人は自己都合で退職したが、6人は今も仕事を続けているという。一方、元組員を受け入れる意向を示した企業は34社。業種は土木建築業をはじめ、運送業や金属加工業、産廃業など幅広い。ただ、同様の制度を先行導入している福岡県の392社(21年末時点)に比べると少なく、事業者に協力を呼びかけている。  

県警は名古屋刑務所と連携し、刑務所で警察官が組員と面会して希望する仕事などを聞き取り、受け入れ企業につないで出所前に採用面接を行う取り組みも始めた。児玉誠司・刑事部長は「刑務所に収容中の暴力団員の社会復帰が促進されるとともに、再犯による再入所を防止する効果が期待できる」と話している。

毎日新聞

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